スポーツジム仲間のOさんが突然こんなことを言い出した。
「JUMPっていうマーシャル系アクション演劇のチケットを4枚タダで貰ったんだけど行く?場所はソウルだけど」
「行く!」
すかさずこう答えた。
「これで4人揃った!決定!」
かれこれ10秒ほどの会話で決まってしまった。Oさんのこのスパッとした性格はなかなか心地良い。
ところで他のメンバーはというと、Oさんの昔からの親友Bさんと、Oさんの会社の同僚T川さんだ。
つまり、全員Oさんつながりだが、Oさん以外はほぼ初対面なのだ。(BさんとT川さんはOさん関係で1,2度顔を合わせたことはあるらしいが)
だからホテルはどういう振り分けをするんだろうと皆疑問に思っていた。
「いいホテル見つけたよ〜」
というメールが届いたのはそれからすぐのことであった。そこはレジデンスタイプの大部屋でしかも宿泊料は格安だった。
「すばらしい!!ここに決定!」
あとは出発を待つのみとなった。
■捻挫しちゃった!
旅行10日前のこと。その日私はスポーツジムのスタジオでエアロビクスの真っ最中だった。「どうせ旅行で食べ過ぎて太るんだったら先に痩せておこう。うっしっしっ!」といういらぬ考えが思いもよらぬことを発生させたのだ。
体を酷使したせいで、体力が限界に来ていたのだろう、突然足首がグニャッとなったかと思うと気が付いたら床に倒れていた。いやそんな表現では物足りない。自分では「メキッ!グワシャッ」いうような感じがした。なんと、足首捻挫だったのだ。
それから10日後。捻挫は思ったよりもひどく、元から象の足と罵られていた足首はますます判別しにくい足首となっていた。だがこれしきのことで旅行をキャンセルする訳にはいかぬ。何と言ってもソウルは初めてなのだ。韓国料理が私を待っている!
という訳で行く気満々なのは変わらなかった。まあ街歩きだけだから大丈夫だろう、と高をくくっていた部分もあったけどね。しかしそれがとんでもないことだと気付くのは宿についてからのことだった。
■すてきで大変な宿泊先
さて、わたしにとって初めてのソウル!!私達の宿泊先は明洞の繁華街からすぐ南の「ソウルタワービレッジ」というレジデンスタイプのところにした。ここは色々な部屋のタイプがあり、私達の部屋は最上階の6人部屋だった。(ここは人気があるらしく、予約したときには4人部屋はいっぱいだった。)わたし達がひそかに思っていた心配も解消され、そしてここは自炊もでき、宿泊代は安くオーナーは親切で部屋はきれいで広くて普通なら文句なしの宿泊先のはずだった・・・
■部屋の様子
冷蔵庫の他、ちょっとした調味料や食器類、ミネラルウォーターのタンクまでも設置されていた。
この台所スペースの左右手前に各2台ずつのベッドが置いてあった。
しかし今のわたしにはきつかった・・・
宿のホームページには明洞まで徒歩5分とある。それに関してまったくの嘘偽りはないのだが、その5分のほとんどが階段なのである。
まずこの部屋から明洞に出るには最上階(たしか5階)のこの部屋からすべて階段を降りる(エレベーターなどない)。捻挫のため、1段ずつしか降りられない。
やっとこさ玄関を出ると、階段の近道か、車道のものすごい遠回りの2者択一だ。もちろん階段を選ぶ。近道の階段は先が見えないほど遠い。いや、このつらさがそう思わせるのかもしれない。
ようやくふもとに下りて来てひと安心と思いきや、最後の難問があった。そのふもとの道から見て、大きな幹線道路の向こう側に明洞の繁華街があるのだが、そこをを渡るためには、一度地下に降りて(もちろん階段)地下道を通って、また上らなければならない。横断歩道などない。この過程を経てやっと明洞に着くことができるのだ。
結局旅中ずっと段に悩まされた。レジは1階テーブルは2階の店、トイレは店と違うフロアー、店内は座敷(これが一番きつかった)、へこんだ危険な道、店入口にはなぜかつまずきそうな段など。まだまだバリアフリーにはほど遠いソウルなのだった。
■すてきな夕食
ところでOさんとT川さんはソウルに本社がある旅行会社にお勤めなので、今日の夕食はなんと!その会社の方のご招待を受けちゃいました。そしてこのレストランはそこのツアーで実際に使うお店なのだとか。
■レストランの様子
そういうお店で食べると言うことは、もちろんお店側からしたらわたし達は単なるお客ではないし、OさんとT川さんからしたら、自分のところのお客さんがどういうお店に連れられるのかの実地調査にもなる。という訳で彼女達は半分仕事気分が抜けきれない様子だったが、わたしとBさんからしたら、おいしいものが食べられて、おいしいお酒が飲めて、ラッキーだった。
焼肉屋以外の韓国料理店に行ったことがないわたしは大興奮。前から食べたかったケジャン(生のワタリガニを漬け込んだもの)やメインの海鮮鍋、本場のマッコリのおいしさに大満足!
韓国人サイドの方を見ると、焼酎を飲んでいる。あの韓国ドラマとかによく出てくるやつだ。試しに飲んでみると結構強い。「マッコリはアルコールっぽくなくて気付いたらすごく酔ってるから危険だ」とか言われたが、焼酎をぐびぐび飲んでいるのも大概だと思うけどな。ホント、焼酎の減りが速いのなんの!まあ確かに韓国料理にはビールより焼酎の方が合うと思ったけど、わたしには真似できん・・・
しばらくすると、あれれ?唇がタラコになっちゃった。甲殻類アレルギーのわたしには生の蟹はかなりきつかったのね。まあ、色気より食い気が勝るわたしには何の問題もなかったが。
夕食後、明洞をうろうろしてみた。結構夜も更けているはずなのに、ものすごい賑わいだ。通路には露店がぎっしり並び、若者でいっぱいだった。
夕食の席でBさんの飲みっぷりにはびっくりしたが、
「さあ、寝る前に飲む焼酎を買わねば」
と言ってコンビニに入っていく姿を見てさらにびっくりした。大食いの私でさえお腹いっぱいでとてもお酒が入るスペースなんてなかったのに、すごいなあ(というか、うらやましいなあ)と思ってしまった。
■路上の乾物屋
たこを選ぶと、はさみでチョキチョキと一口大に切り、それをその場で油で揚げて、タレをつけて渡してくれた。Bさんおすすめの酒のアテらしい。
寝る前にBさんがひとり夜酒のセッティングをしているのを見て、さっきまで吐きそうになるほどお腹がいっぱいだったにもかかわらず、
別バラが作動し始めた。
「どう?一緒に飲まない?一緒に飲んでくれる人がいるとうれしいんだけどなあ」
とか言われるともうダメ。こんなことなら自分の分も買っておけばよかったのだが、Bさんのお酒を貰っちゃいました。夕食に出てきたものよりは薄い焼酎を飲みながら揚げだこを食べてみたが、これがなかなかやめられないっ。すっかりヘベレケになってしまったわたしである。
■蚊に悩まされる
ほろ酔い気分でぐっすり眠っていたと思っていたが、腕のかゆみで目が覚めた。
(なんかかゆいなぁ)
寝ぼけているのでまだ蚊だとは思っていなかった。あちこちがかゆい。
「ピィ〜〜〜〜ン」
うわ!蚊だ!わたしは飛び起きた。わたしは蚊が1匹でもいると寝られないのだ。
(ヤバイ!酒のせいで体温が上がっているから蚊に狙われるんだ!)
意味無く手足をバタバタさせてみる。
「ピィ〜〜〜〜ン」
(うわっ!また来た。)
あてずっぽうに手を叩いてみるがヒットするわけがない。でもよく考えたらここには他にも人がいるんだ。そうだ!蚊にわたしをあきらめさせればいいのだ。
わたしはふとんを頭からすっぽりとかぶり、ぴったりと隙間を無くした。夏の暑いクーラーを切った部屋の中での出来事だった。
暑いのを耐えるか蚊の不快感を耐えるか、という究極の選択をどっちつかずで終わらせた私はあまり眠った気がしなかった。
■朝のひととき
朝、学校の朝礼のような声がして目が覚めた。韓国語はまったく分からないが、あきらかに「右向け右っ!!」と言っているのが分かった。そして校長先生?のお話が始まっていた。
そうだ、隣は学校だったけ。ということはもう9時?!そういえばあれから蚊は来なかったなあ。
「お早う!昨日は蚊が何度も来て全然眠れなかったわ」
と言ったのはOさんとT川さん。ふたりは横どうしで眠っていた。なんでもわたしとBさんが飲んでいるときから明け方まで何度も蚊の襲撃に遭ったらしい。わたしは離れた所でひとりで、Bさんも同じくひとりで寝ていた。蚊の野郎、効率的に吸える所を選んだな。
今日の晩、この旅行の目的の「JUMP」の公演の予定が入っている他は特に用はないので、とりあえず腹ごしらえに出発した。
また例のつらい階段が待っていた。
「いやあ、コタさん(私のこと)が捻挫してて本当よかった。」とBさん。そりゃどういうことだ!
「Oさんと旅行に行ったら足が速すぎていつもおいてけぼりやもん。今回はさすがに怪我人がいるからゆっくり歩いてくれるやろ」
以前OさんとBさんが旅行したとき、Oさんはどんどん先を行くし、一度はまだBさんが追いついてないのに来ていた列車に飛び乗り、Bさんははぐれないためにそれは大変だったらしい。Oさんいわく「はぐれたら次の駅で待ってるやん」と。う〜ん。コメントは差し控えよう。
それにしてもよかった・・・歩くのが遅くて迷惑かけてると思ってたけど乗り遅れても次の駅で待ってくれてるだろう。
朝食は明洞のソルロンタンのお店へ。
■朝食
お店のテーブルには備え付けのトレイが付いていて、キムチは食べ放題!ソルロンタンは牛の骨のだしに牛の肉とネギが入ったスープだ。このスープ自体ダシがきいているが薄味で、この中にごはんとキムチやコチジャンなどで味を調整して食べる。ごはんは1膳なのに汁で膨れるのか、このわたしが全部食べ切れなかった。
■BBクリーム
食後、ロッテ百貨店の免税店へ行ってみた。そこで今話題のBBクリームを見るためだ。Oさんの会社の方の好意で免税品割引券をいただいた上に、T川さんがネットで割引クーポン券をコピーしていてくれたため、すごく安く買うことができた。
BBクリームはすごい。本来、整形手術後の化粧による肌の負担を軽くするために開発されたものらしいが、化粧下地、日焼け止め、美容、そしてファンデーションの役割まで担っていると言う。この面倒くさがりのわたしにはぴったりな一品ではないか。
■Dr. Jart+のBBクリーム
ほんの少量肌にのばすと、すっぴんよりはマシなかんじになる。ただし塗りすぎると顔が真っ白になり、化粧オバケのようになるので色黒の人は注意が必要だ。
■すてきな夕食(part2)
夕方、OさんとT川さんのソウルの会社を訪ねた。なんでも、寄るように連絡を受けていたらしい。二人はまた仕事モードに成らざるを得なかった。
「えー!行くの邪魔くさい」
とか言いながらしぶしぶ出かけていった二人。「まあそういいなさんな。」と言えるのは部外者だからだろう。
そしてまたもや夕食をごちそうになってしまった。ここでのメインはサムギョプサル!豚の三枚肉の焼肉だ。
■サムギョプサル(焼く前) ■焼くとこんな風になる
これをサンチュ、エゴマの葉などでお好みでキムチなどと一緒にくるんで食べるのだが、めちゃくちゃおいしいのだ。最後には冷麺までいただいて、もう確実にこの旅行で太ったな。と確信した。
■JUMPを観て
食後、ついに今回の旅のメインイベント「JUMP」の公演を観る時間になった。
席についてビックリ!なんと1列目のド真ん中!だったのだ。さすがはご招待券だけのことはある。もう役者の息づかいは分かるし、汗も飛んでくる位置だ。
どんなステージかというと、テコンドーをモチーフにしたアクロバット演劇で、韓国語が分からなくても楽しめるように工夫されている。
目の前のかっこいい武術やアクロバットでもうメロメロ。ほ・・・惚れた。日本に帰ってからもホームページを見てにやついている私であった。
役者はイケメン、美人揃い、ユーモアたっぷりで、観客が参加する場面もあり、武術はかっこいいし言うことなし。ソウルを訪れるときは是非どうぞ。
■「JUMP」のチケットと会場前
公演の帰り道、少し遠回りして近くの民俗酒場へ寄った。ここはOさんの韓国人の友人のおすすめの店で、松の実マッコリがおいしいとのことで、路地を歩く。
散々迷ったあげく、ようやくお目当ての店発見。やっと見つけたよろこびから、なんという店か記憶するのを忘れてしまった。また来るときは迷うかもね。
早速注文してみると、中身もいいけど木でできた柄杓もよくて、いい雰囲気だった。酒のアテに頼んだナスの天ぷらもおいしかった。
普段お酒を飲まないOさんも飲んでいたし、Bさんもこれをすごく楽しみにしていた。わたしも多分次回からはここへ行くだろうな。酒飲みにはたまらなく居心地にいいお店だった。
■松の実マッコリとナスの天ぷら
■昌徳宮を訪ねて
今日は早くも最終日である。3人はともかくわたしは初めてのソウルなので観光に連れて行ってもらった。
宿泊先の明洞から歩いて30分ほどの距離にある仁寺洞へ向かった。
わたしとT川さんは初めてだったので昌徳宮へ見学に行った。
ここは世界遺産で、見学するには時間指定のツアーに参加しなければならないが、残念ながら時間的に日本語ツアーに参加することはできなかった。今日も寝坊したからだ。
日本語ツアーは日本人は早起きとみて朝早く集中している。
わたし達が訪れた時間帯はちょうど英語ツアーの時間だった。早起きの欧米人もいるだろうに、これが英語ツアーでは一番早いツアーだ。そして1時間半ほどのコースを周ってきた。
少し見てきたものをおさらいしておこう。
■丹青(タンチョン)
この色は王宮などの特別な建物の色として使われているものだ。この色鮮やかさには独特なものを感じさせられた。権威の象徴としての色彩だそうだ。
■宣政殿
王の執務所だったところ。青い瓦の建物であるが、現存する宮殿の中ではこれだけだそうで、貴重なものだ。
■雑像(チャップサン)
言われないと気付かないが、西遊記の登場人物である。先頭から、三蔵法師、孫悟空、猪八戒の像とされている。韓国には河童伝説がないので残念ながら沙悟浄の姿はないそうだ。
残念ながら理解できたのはこの3箇所くらいだった。こんなとき、英語をもっとよく勉強しておけばよかったと思うのだが、いつも後の祭りだ。
■憧れの韓定食
昌徳宮見学の後、仁寺洞のおみやげ物屋さんをのぞいたりした。伝統的なものをモチーフとして現代的なアートにアレンジした小物は一見の価値あり。お値段の方もそれなりだけどね。
今日の昼食は韓国に行ったら是非一度は試してみたいもの それは韓定食だ!
ただ韓定食は豪華な分値段も高い。今回訪れたお店はリーズナブルなのに本格韓定食を味わえる店だということだった。
通された部屋は座敷になっていて中庭に面した窓側の席だった。雰囲気抜群の店で、落ち着いた趣があった。
しかし韓国というところは本当に座敷の店が多いものだ。足の悪い私は靴の脱ぎ着もつらい上に足を曲げて座ることもできないのでホント苦労した。
料理が運ばれてきたので、皿を適当に横へ寄せようとするとダメだと言われた。なんか料理の並べ方にも決まりがあるみたいだ。途中で全部の料理が置き切れなくなり、最後は適当に動かしていたが、それは見なかったことにしよう。
意外とおいしいと思ったのがチョギチム(イシモチの蒸し物)。ただの魚だと思ったけど予想外に旨味がありびっくりした。テンジャンチゲ(味噌汁の鍋)は日本の味噌と違ってすこしクセのある匂いが特徴だ。ムルキムチ(水キムチ)は初めて食べたがやめられないおいしさだった。
早くも三日経ってしまった。韓国は日本との時差がない分体に負担がかからず、また文化的にも近いため、気軽に訪れることができるだろう。ただ、ソウルは坂が多くバリアフリーでもないので足の悪い人はお気をつけて。
(2009.3.4)
